先端技術の部下教育

ドーパミンの働き

 

前回の投稿で

ドーパミンの分泌がどうしたら起こるのか、

またその役割について解説しました。

 

このように現代脳科学は、

その機能の解明や制御についても

すごいスピードで進歩しています。

 

同時にこの機能分析の結果が、

コンピュータ開発に応用されていきます。

 

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ディープラーニングを生み出したIBMの「ワトソン」(注)

これまで特定できなかった遺伝子解析に成功しましたが、

なんと世界の2,300万件の博士論文を自己学習し、

その症例に効果のある最適な薬を探し出すそうです。

 

今や癌を含む難病の治療は、

コンピュータによる遺伝子解析(DNA)によって

分子標的薬を見つけ、患者に投与する時代に来ているのです。

 

一方で

トラウマやうつ症状などの精神障害についても、

その症状を緩和する薬やサプリの開発が進んでおり、

薬が肉体はもとより精神状態の改善にも

達効をもたらしています。

 

では次に、

脳内伝達物質のひとつ「ノルアドレナリン」について解説します。

 

この物質はひとことでいうと

「闘争か逃走か?」

いわゆる闘うか、それとも逃げるかの

瞬間的判断を促す働きがあります。

 

はるか原始時代の人間が、

野山で狩りをしている時に、

突然大きな熊と遭遇してしまった。

今にも襲いかかって来ようと牙をむき、

うなり声を上げます。

この熊との遭遇は、恐怖すなわち不快ですから、

扁桃体は

「危険」

という状況判断を下し、ノルアドレナリンを分泌させます。

 

この瞬間にとる行動は

「闘う」「逃げる」かです。

 

ノルアドレナリンが分泌されることで、

心拍数は高まり、脳や筋肉に血液が行き渡ります。

 

脳と身体を適切な準備状態にもっていき、次の動作に備えます。

覚醒度、集中度も俄然アップします。

 

ぼんやりとしていた頭が冴えわたり、

正しい判断が瞬間的にできるように、

脳の働きも大きくアップするのです。

 

またノルアドレナリンは

「痛み」を感じにくくさせる鎮痛剤のような作用がありますので、

万一戦って負傷した場合でも、

痛みに負けることなく相手を打ち負かす持続性があるのです。

 

例えば会議中に、

あなたの部下が緊張感のないだらけた態度をとった場合、

いきなり大きな声で叱責してみることも

部下にノルアドレナリンを分泌させ集中して

会議に参加するきっかけを与えることになります。

 

また客先との応対では、

怒ったり叱ったりはできませんが、

急に声を大きくして強調することは、テクニックとして知っておくべきでしょう。

 

気もそぞろだった客先が、耳を傾けてくれたとしたら、

客先の脳にノルアドレナリンが分泌されたことによる反応と解釈できます。

 

ドーパミンの分泌は「快」に対する反応に対して、

ノルアドレナリンの分泌は「不快」を避ける逆の反応ですが、

面白いことに両方共一時的に脳を活性化し、創造力を高めます。

 

いわゆる、

 

仕事が出来る状態です。

 

 

よく部下指導は「アメとムチ」だと言われますが、

もうお分かりのように、

アメとは相手の脳にドーパミンを分泌させることであり、

ムチとは厳しく叱ることにより、

ノルアドレナリンを分泌させることに他なりません。

 

注意が必要なことは、

常時叱り続けると、次第にその反応に部下は慣れてしまい、

当初の緊張感や闘争本能が薄れていってしまうことです。

 

やはり、適度に、交互にこうした「快」と「不快」の反応を

引き出すテクニックが上司には求められます。

 

次回は心の安定と共感をもたらす「セロトニン」について解説します。

ドーパミンは「快」を求めモチベーションを上げ、

ノルアドレナリンは「不快」を避けますが、

あまり長期に渡るとうつ症状が出ます。

 

セロトニンはこの二つの支点のような役割をしており、

常にバランスをとる働きです。

 

 

(注)IBMはワトソンを、自然言語を理解、学習し人間の意思決定を支援するコグニティブ・コンピューティング・システムと定義している。(コグニティブとは認知、コグニティブ・サイエンスとは認知科学)

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